知床流氷ウォークと厳冬期の知床五湖エコツアー

SHIRETOKO RYUHYO AMBASSADOR

知床流氷アンバサダー #2
流氷フリーダイバー・高木 唯

流氷フリーダイバーが見た、知床流氷の魅力

知床に縁があり、流氷の魅力をユニークな視点から紹介してくれる人を「知床流氷アンバサダー」として、皆さんにお伝えしていくシリーズ第二弾。斜里町ウトロで生まれ育ち、日本全国・そして世界で活躍している流氷フリーダイバーの高木唯さん。現在は、斜里町の地域おこし協力隊として活動もしている彼女が語る、知床の流氷の魅力とは?


来年も、またその次も

フリーダイビングという競技をしていた私は、
斜里町ウトロの流氷の下で素潜りするイベントを仲間と開催している。
マイナス2度の氷の下に潜るなんて信じられないかもしれないけど、
何度も来てくれる人、行きたいと言ってくれる人がいる。

流氷の下は薄暗く、ところどころ明るい。
水面がフラットに凍っているのではなく、氷の山や谷がある。
ウェットスーツは着ているけど、皮膚が出る顔は痛い。
夏の海のような生き物の気配は感じない。
寒くて冷たいけど、下から見る光は暖かい。

静かで薄暗い流氷の下から水面に出ると真っ白でまぶしくて、
呼吸ができて音も聞こえてくる。
「生まれる」って、もしかしたらこんな感覚なのかな。

流氷が栄養を運んでくる知床で暮らす私たちは、
親鳥が運ぶ餌で育つ雛のようで、流氷の子みたい。
そんなこと考えながら潜ったことはないけど。

世界的な記録に挑戦する計画があるんです。
打ち合わせの中で「流氷が減っているように感じる。数年後は来ないかも。
記録が作れるほどの流氷が押し寄せていたということを残したい。」
という声があった。

少なくなっていると感じつつも、
どこかでなくなるはずはないと思っていた自分に気付いて、
はっとした。

その準備のために現地調査を行ったが、
潜るための穴を開けた翌日、流氷はほとんどいなくなってしまった。

フリーダイビングでは「海は逃げないから」とよく言われる。
海はずっとあるから無理しないで、次があるよ、大丈夫。

今はまだ次の機会があるけど、
次がない未来はすぐそこまで来ているのかもしれない。

これからもずっと流氷が来る未来が続くためには
どうしたらいいのか考えている。

(この記事は「asirietok」Vol.2を再録しました)

知床に暮らす人びとの暮らしと魅力を伝えるフリーペーパー「asiretok(アシリエトク)

Profile
知床ウトロ出身。テレビで小谷実可子さんがイルカと泳いでいるのを見て水中の世界に憧れ、潜水士の父親のもと、中学校入学と同時にスキューバダイビングを始める。その後沖縄へ移住、アジアチャンピオン篠宮龍三氏のスクールで、フリーダイビングを始める。2011年AIDAフリーダイビングワールドチャンピオンシップス日本代表。
競技から退いた後はマリンコーディネーターとして映画やCMの撮影でボディダブルや潜水補助、水中操演を行う。2013年より斜里町ウトロで流氷フリーダイビングイベント「ICE CUP」を主催。2021年地域おこし協力隊として地元斜里町へUターン。一般社団法人知床しゃり勤務。知床半島ルシャ地区のゴミ拾いボランティア「知床をきれいにし隊」代表。

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ICE CUP
一社) 知床しゃり

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